病者等を救助するロープワーク

メール Timtam ロープワーク目次

 
自己脱出(=ロープ登り)&降り

@トップロープでビレーしてもらいながら練習すること。
@スリング(ハーネス用と足用の2か所)をセットして登る(降りる場合も同じ)
@ダイニーマスリングは融点が150度と低く溶融に注意すること。



ハーネス用の例=メインロープに60cmスリングをフリクションヒッチ(巻数多いマッシャーが良い)を巻き付ける(セットする)。そのフリクションヒッチに60cmスリングをタイオフ(カウヒッチ)して連結、さらにハーネスの安全環付カラビナに連結する。

足用の例=上記でセットしたハーネス用スリングのすぐ下に、フリクションヒッチを巻き付ける(メインロープに巻き付ける)。そのフリクションヒッチに60cmスリングを2重にして作った30cmスリングをタイオフ(グースヒッチ)して連結し、次に60cmスリングをその30cmスリングにタイオフして連結する。結果としてハーネス用より25cm程度長くなる。一番下になる60cmスリングに足を入れて土踏まずで立ち上る(アブミになる)。


@終了方法 その1
適当な高さまで登ったら、ハーネスより下に垂れたロープに懸垂下降器をセットする。セットした懸垂下降器のさらに下に垂れたロープに足に巻き付けて踏みつけて立ち上がり、 スリングのテンションを解除する。スリングを回収して、懸垂下降する。

@終了方法 その2
トップロープをセットする。ビレーヤーはメインロープを仮固定、クライマーは上から来るロープを自己脱出で登る、適当な高さまで登ったらビレーヤーは仮固定を解いて、クライマーをロワーダウンさせる。

@終了方法 その3
一番上の支点まで登り、テラスに立ってロープのテンションを解除する。セルフビレーをセットした後、自己脱出システムを解除する。練習ではあまり高くまで登らない方が良いので、自信を持って自己脱出が出来るようになってから行うこと。





 

@セカンドオートロック型ビレー器があれば、自己脱出のバックアップをセットすることが出来る。また、ハーネス用のフリクションヒッチを省略することも出来る。懸垂下降登り返しの項を参照のこと。


墜落するとロックする。


下に垂れるロープを引き上げながら登る。

 
山岳事故(山での怪我)の傷病者評価

キーワード: 三つのS と ABC 
一見軽症に見える人でも、必ずこの手順で身体全体を観察しましょう。特に、数メートル以上の転滑落、落石事故など、身体に大きな衝撃を受けたときは、命に関わる怪我を見落とさないことが大切です(軽症の人にこの手順を踏んでも、それで手遅れになることはありません)。


SS→S→A→B→C(一つの段階をクリア出来なかったら先に進んではならない) 
  SS:Safety & Scene 安全&状況
   S:Supine 脊椎(頸椎)管理
   A:Airway 気道があいているか
   B:Breathing 呼吸をしているか
   C:Circulation 脈/活動性出血
   D:Disability 障害部位は、意識はあるか
   E:Environmental control
(辞書=scene→舞台,場面 supine→脊椎 disability→身体障害  environmental→周囲の,環境の)
Supineは医学用語で脊椎の意味があります。覚えにくければ 背骨(Sebone)で覚えてください
SS→
まず、近寄る前に必ず確認
①3つの安全(その場所・自分・傷病者)を確認する。
②状況の確認(何がどうしてそうなったのかを可能な範囲で確認)
③同行者がいれば安全な場所に待機するよう指示する。
④下降する場合は、傷病者の真上からでなくて、少し離れた落石を落とさない場所から近づく。

S→
①傷病者に声をかける前に頭を押さえる(首を動かすことをさせない)。
②離れていて、すぐに近づけず、声をかけざる得ない場合は
「動かないで下さい!振り向かないで下さい」と言ってから
「大丈夫ですか?」と言う。
③頭を両手でボーリングの玉を持つ感じで押さえる。
④傷病者の頭側から近づき親指を傷病者の鼻の方向に向けて持つ。
頸椎の固定は、1)意識がしっかりしていて、2)他に大きな外傷(痛みが強い部位)がなく、3)首の後ろの痛みや手足の痺れがない、の3つが確認出来るまで続けるのが原則
現場での頸椎固定の解除には議論の余地があります。現時点では上記にしておくのが無難でしょう

A→

*首の痛みや動かすときに抵抗が無いことを確認しながら、顔をゆっくりと正面に向ける。
このとき、声が出れば気道は開通している。ヒューヒュー、ゴロゴロなど異音がしないかを観察。分かりにくいときは、次のBと同時に、顔を口元に近づけて行う

B→
*呼吸の確認(見て、聞いて、感じて)
自分の耳と頬を相手の口元に近づけて、速さ(回数)・深さなどを観察

C→

①脈があるかみる(手首・首)(わからなければ心臓の部分に直接耳をあてる)。
②脈がないのに(心肺停止しているのに)ヘリコプター(命がけで飛んで来る)を要請して良いのか?
③出血部位の確認と止血(止血は現場で出来る最も有効な処置である)
④動脈からの出血も、指二本の圧迫で止めることが出来る。

D→
①意識のレベルを確認
 (1)目をあき何もしなくても反応する
 (2)声をかけると反応する
 (3)たたいたりすると反応する
 (4)何をしても反応しない
②障害部位の確認
 (1)全体に体を触って観察する。
 (2)頭以外にも、胸、腹、骨盤の損傷は命にカカワル(大腿骨もかなり危ない)。
 (3)骨盤に触るのは1回だけ(骨盤骨折を2回以上も触るのは不可)

E→
①状況を全体に再確認する。
②環境を整える(ツエルトを張るなど)。
③Eまで終わってから状況報告や救助要請の電話をする。

SSからEまでの流れのポイト
①安全確保
・・・自分の安全優先、傷病者の安全確認
・・・何が起きたのか、傷病者の数
②傷病者初期評価
・・・生命リスクを評価し異常があれば即時対応
③傷病者二次評価
・・・簡潔な全身評価と病歴聞き取り

<参考資料>山岳医療情報 大城和恵 http://www.sangakui.jp

 
ロープを投げないで懸垂用のロープを張る方法。
懸垂用のロープを投げるとヤブや岩角に引っかかるのがあたりまえである (こちらをごらん下さい)。 一番目に懸垂下降する人は引っかかったロープを直しながら(末端を結べばそれが岩角などに引っかかって取れなくなる可能性もある) 降りなければならないので、危険である。フリクションヒッチを懸垂用ロープにかけてハーネスと連結する方法でバックアップ を施すべきだが、そのゆとりもないほどに急がされる場合も多い。
*概ねのリスクに対応出来るベストな方法は「下記①のロープを袋に入れて腰から吊るす方法」である。

①懸垂下降をする者がロープを袋に入れて腰から吊るし、ロープを投げずに袋から繰り出しながら降りて行く方法

…ロープを袋に入れる方法がベストと考えられる。

…ロープの末端を結べるので安心度も高い。

…細いダブルロープでなくて、シングルロープ2本をつないで懸垂下降する場合、ロープ2本はロープ袋に入りきらないのでロープ袋を2つ用意する。

…ロープの末端を結ぶ時は2本束ねて結びます。潅木にひっかかるなどのトラブルを防ぐため、2本を束ねて結ばずに、1本ずつそれぞれにノットを作る方法がありますが、誤って末端の結びを解かずにロープの回収を始めてしまうと、ロープが回収出来なくなります。


②懸垂下降をする者がロープをループにして首にかけ、数メートルずつ繰り出しながら懸垂下降する方法

…片手で懸垂のロープを抑え、片手で首のループからロープを繰り出す。

…①の方法に比べ、袋に入れる手間が省略出来て便利だが、首つりになってしまうリスクがある。

…投げたらひっかりそうな所で、とにかく早く下降してしまわななければならない時に有効な方法である。


③2本のロープの1本ずつを振り分けて右と左の腰に短いスリングで吊るし、左右から少しずつロープを繰り出しながら懸垂下降する方法

…末端を結び(結び目を解かずにロープの回収を開始してしまい回収不能になるリスク有)、 ロープを振り分け、60cmスリングを2重にした30cmスリングで振り分けたロープ束の中央を吊って、ハーネスのギアラックにカラビナで吊るす。 その作業を右のロープと左のロープ1本ずつ行う(クライマーの左右の大腿のあたりにロープが吊られる)。

…ロープがクライマーの腹側から引き出されるようにセットする(背中側から引き出されてはいけない)。

…右と左からロープが出て来るので、ビレー器の真下、体の中心線の所にロープを持つ手(制動手)が来ることになる(両手を上下に接近させてロープを握る)。

…ズボンの腰のあたりロープを添わせて制動をプラスすることが出来ないので手袋をして懸垂下降をすること。

…失敗すると長くロープが出すぎて垂れ下がってしまう可能性がある(潅木が多ければ引っかかる)。


④ロープを投げずに懸垂の支点の付近に残して置き、懸垂者が4本のロープを引く形で降りて行く方法。

…上の者が懸垂用ロープを徐々に繰り出して補助する。

…半分の距離を懸垂した所で、半分の距離分のロープが落ちて来る(ロープといっしょに石も落ちるので注意)。

…その半分のロープがどこかに引っかかるかも知れないので、末端は結ばない。


⑤エイト環等でビレーしながら吊り下ろす方法

…懸垂者は両手が使える。

…懸垂者が見えない状態で降ろすのは危険(懸垂距離は15メートル以内に留める)。

…20メートルも降ろすとロープの重さで懸垂者の動きがわからなくなる。


⑥カウンターラッペル  カウンターラッペルの動画


…カンターラッペルにおける懸垂の支点は金属の輪でなければならない(ゲートを反対向きにした2枚のカラビナ、そのカラビナは残置する)。
*残置スリングを懸垂の支点にしてはならない。懸垂下降の途中で熱により溶融して、スリングが切れてしまう。

…トップロープのロワーダウンする時の形なのだが、ビレーは登っている者自身が行う。

…ロープは投げずに上に残し、懸垂者が引きながら、降りていく。

…ロープが岩角にあたり擦れる部分が多いので(摺れが原因で石が落ちるので注意)、長い距離(5メートル程度以上)の懸垂には向かないが、最も早くロープが張れる方法である。

…50メートルロープを使い、16.6m(50m÷3)以下の距離を下るカウンターラッペルならば、上から3本のロープが垂れる状態で懸垂を終了出来る。懸垂者の下降器にセットされていたロープを負傷者のハーネスの安全環付カラビナにかければ、3分の1のつりあげシステムを作ることが出来る。 手の使える負傷者なら2分の1(3分の1ではない)のシステムで行う負傷者がロープをたぐる方法も使えるので非常に素早く吊り上げることが出来る。

*カウンターラッペルは縦走路から数メートル下に落ちた負傷者の所まで素早く懸垂下降し、状況を確認し、負傷者を縦走路まで吊り上げるのに非常に有効な方法である。

*ただし、石を落とす可能性が大なので、負傷者の真上からでなく少し離れた所から降りること。

 
懸垂下降の登り返し

自己脱出による登り返し

懸垂下降で下まで降りたトップ(以下:下の人)は、ロープを引いてみてロープが回収出来るか確かめる。次に降りた地点から先に進めるかを確認する。ロープは回収出来るが、降りた地点から先にはまだゴルジュが続くなどの理由で進めない場合には、ロープを回収しないで、上の懸垂の開始地点まで登り帰さなければならない。上に残る人と打ち合わせが出来ていなければ、自己脱出でロープを登る。


セカンドオートロック型ビレー器による登り返し、その1

ハーネスのビレーループと安全環付カラビナを30cmスリング(60cmスリングの二つ折り)でつなぎその安全環つきカラビナに セカンドオートロック型ビレー器(ATCガイド等、以下ATCガイド)と懸垂用ロープをセットしする。ATCガイドのすぐ下の懸垂用ロープに60cmスリングで オートブロックヒッチ(バッチマンその1が良い)を施して、それをカラビナでビレーループと連結する。懸垂の制動手が右手とすれば、 左手でそのオートブロックヒッチがロックしないように調節しながら懸垂下降をする。トラブルが起きた場合は左手を解放して、 オートブロックヒッチをロックさせて懸垂下降を停止する。その後、以下の方法で登り返す。

①ATCガイドより数十センチ上にオートブロックヒッチを施し足用のスリングをセットして、足で立ちあがる。
自己脱出の項参照して下さい。それ(自己脱出)の足用スリングです。

②ATCガイドのカラビナホールとハーネスのビレーループを安全環付カラビナで連結する。


③ATCガイドとオートブロックヒッチの間にあるロープを2本まとめて引き上げる。

④ATUガイドにぶら下がる(ATCガイドはロックする)。

⑤足用スリングを上にスライドさせる。

⑥足で立ち上がりながら、ATCガイドとオートブロックヒッチの間にあるロープを2本まとめて引き上げる。
*立ち上がりとロープの引き上げのタイミングを合わせること(立ち上がりの方が遅れるイメージ)。

⑦以後、④~⑥をくりかえして登って行く


セカンドオートロック型ビレー器による登り返し、その2
もし比較的緩斜面の登り返しで、さらにオートロック型ビレー器(ルベルソーキューブ等)を持っているならば、ハーネスのビレーループに降りる方向にロックする(登りはロックしない)ようにそれをセットし自分で自分をビレーしながら登る(緩斜面なら自己脱出をセットしなくてもオートロック型ビレー器だけで登れてしまう)。


上の人と協力しての登り返し
打ち合わせが出来ているか、上と下で声が聞こえて話が出来るようなら、以下の方法が使える。テンションのかかったロープがスライドするので、自己脱出による方法に比べて落石を起こしやすいので自己脱出が出来ない場合に使うのが良い。

<その1>2本ごぼう抜き
①下の人は、2本の下に垂れた懸垂用ロープの末端を2本共ハーネスに結ぶ。

②上の人はロープをビレーしながら(orオートロックシステムを施して)2本まとめて引き上げる。


<その2>1本ごぼう抜き
①上の人は懸垂用のロープをスライドしないように固定する(確実に固定)。

②下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの内一本(Aロープ)をハーネスに結ぶ。

③上の人はAロープをビレーしながら(orオートロックシステムを施して)引き上げる。

④下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープでビレーに使わなかった側のロープ(Bロープ)にすがって登る。

⑤ロープが細いとかオーバーハングの岩場で腕力が尽きそうならば、下の人は、Bロープにフリクションヒッチをかけてホールドにしたり、自己脱出を使ったりして登る。


<その3>2分の1システムによる吊り上げ
①下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの末端を繋ぎ、そのロープを自分のハーネスの安全環付カラビナに通す。

②上の人は、下に垂れたロープの内一本をロープの結び目が上がって来るまで引き上げる。

③上の人は、結び目が上がって来たら、懸垂用のロープがスライドしないように固定する(確実に固定)。そして、一本のロープ(Aロープ)をビレーしながら(orオートロックシステムを施して)引き上げる。

④下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの内の一本で引き上がらない方のロープ(Bロープ)にすがって登る。

⑤結果として2分の1の吊り上げシステムとなって、楽に早く登り返すことが出来る。

 
人を背負ってを懸垂下降する方法 その1


@懸垂下降というよりはロワーダウンと呼ばれている方法に近い
*キーポイント1=「人を背負ことで生じる下降器の制動力不足を補うこと」

*キーポイント2=「負傷者にメインロープからセルフビレーをセットすること」

*キーポイント3=「負傷者のセルフビーレを負傷者の体重でテンションがかかる長さに調節すること」

@短距離(ロープの長さの1/3以下程度)を降りる時に有効である。長い距離の場合は次項の懸垂救助の方法を用いた方が良い可能性が高いので状況に応じて選択しなければならない。

@救助者が1人だけしかいない場合に有効である。2人以上いる場合は次項の懸垂救助の方法を用いた方が良い可能性が高いので状況に応じて選択しなければならない。

@救助者は、自分のハーネスに結んだ懸垂用ロープを上に向かわせ、ロワーダウンの支点で折り返して下に向かわせる、 下に向かって降りてきたロープをボディビレーする(カウンターラッペルと呼ばれている)。
*救助者はビレー器を通してロープを上に送り出すことで下降する。トップロープの支点の摩擦が加わって制動力が増す。


*カウンターラッペルは、ロープ支点にかけて真ん中を出す必要がないので最も早く懸垂下降が開始出来る。 あちらこちらで擦れるのでロープが痛む。「カウンターラッペルはオーバーハングでないかぎり、その「あちらこちらで擦れ」が大きすぎて 長い距離の懸垂下降には向いていないと知っていなければならない。またその「あちらこちらで擦れ」で 落石を起こしやすいと知っていなければならない。

@負傷者のセルフビレーをセットする。
*救助者のハーネスから上に伸びるロープの、ハーネスから1mくらい上の所に、フリクションヒッチ(バッチマン等)でスリングをセットする (下降を開始する前にセットしておく)。
*負傷者の所まで降りたら、負傷者のハーネスと上記スリングを連結してセルフビレーとする{連結する前にフリクションヒッチをスライドして、 ちょうど背負いやすい長さ
(セルフビレーにテンションがかかり負傷者の体重の何割かを支える程度) に調節すること}。

@負傷者の手当てをし、背負って、降りる。




懸垂救助(負傷者が宙吊りになっている場合の救助の方法)
@負傷者役の者が、トップロープにつながり岩場の途中まで登り、手を離してトップロープに宙吊りになる。トップロープの確保者は、テンションのかかったロープを仮固定し、その場に待機する。

@救助者役の者は負傷者の上部から懸垂下降する(落石に注意)。

@懸垂下降はハーフマスト2回ひねりエイト環2回がけなど、制動力の大きな方法を使う。

@負傷者の上部で、負傷者のハーネスに手が届く位置でなるべく高い位置に停止し、ロープを何回も巻きつけて仮固定する。二人分の体重がかかって解除出来る仮固定でなければならないので、仮固定をしないで制動手を握りしめ、もう一方の手で負傷者との連結作業などっを行った方が良い場合も多い。

@負傷者を、救助者のエイト環の小さい輪又はそこにかけたカラビナに、スリングで連結する(ロープのテンションがあるので、負傷者は軽く持ち上がり、救助者はその重みで下がるので連結は容易である)。負傷者を救助者のハーネスに連結してはならない(トラブルが発生した場合救助者の身動きがとれなくなる)。

@負傷者の腹を救助者の足の間にはさむ感じの位置になり、スリング負傷者の背中からとって負傷者の頭を起こすようにする。頭を起こすことは省略しても早く下ろした方が良い場合もある。

@負傷者をささえていたロープを切断する。この時救助者の懸垂用のロープを切ってしまわないように、ナイフの刃の向きなどに配慮が必要である。本訓練ではロープを切断せずにトップロープの確保者が仮固定をといてロープを流す。

@救助者は仮固定をといて負傷者を連結したまま懸垂下降を再開し、下まで降りる。


人を背負ってを懸垂下降する方法 その2
…長射距離を人を背負って懸垂下降する場合は懸垂救助の方法を用いる。

…上のテラスに補助者がいてさらに懸垂用ロープAとは別のロープBがあれば負傷者を上からロープBでビレー(張り気味でビレー)する (補助者による負傷者の上からのロワーダウン+背負う人の自力懸垂)懸垂の距離が短い場合(数メートル程度)は下の写真の灰スリングは省略出来るしエイト環2回がけなどで制動力を増さなくても大丈夫になる (懸垂の距離が長いときは補助者による上からのコントロールが出来なくなるので灰スリングや制動力の増加は省略してはならない)

…下のテラスに補助者がいれば、懸垂用のロープAを持って補助する(不足の事態に懸垂用ロープAを引けば懸垂は停止する)。下の補助者は上からの落石の来ない場所にいること。

…懸垂の距離が長い場合は、ロープBの重さに翻弄されて、上の補助者が確実にビレー出来なくなるので注意。


紫スリング(下降器をハーネスから離してセットする工夫)は救助者につながる。灰スリングは負傷者のセルフビレーである (エイト環の小さい方の穴を利用してセルフビレーをセットする)。オレンジロープを仮固定すれば、救助者がシステムから脱出できる(脱出できることが本システムの真骨頂)。


二人分の体重がかかっても大丈夫なように、あらかじめエイト環2回がけなどの方法で下降器の制動力を増しておくこと。
下に人がいれば懸垂ロープを持って補助する(落石に注意)。



 
懸垂ロープの継ぎ足し
*まずこちらの記事をごらん下さい。
*2本のロープをつながないで懸垂下降を開始してしまった所、懸垂の途中でロープAが足りなくなった場合を想定する。

*別の救助者が上から懸垂の途中地点にもう1本のロープBを届ける。

*ロープをAとロープBの末端を2箇所共連結(結び目αと結び目β)して大きな輪を作る。

*連結部の結び目通過してロープBで下降を続ける。

*下に降りたら、ロープBの右側を引き、結び目αが降りて来たら結び目αをほどく。その後ロープBの左側(反対側)を引き結び目βを引き寄せながらロープBを回収する。結び目βをほどきロープAも回収する。


 
簡易ハーネス

120cmスリングと60cmスリングで作る方法

(1)前から見た所(60cmスリング2本をガースヒッチでつないで腰のベルトとする。2本つなぐことで後部にも中央の場所が出来る(3)の写真参照)


(2)横から見た所

 
(3)後ろから見た所(カラビナよりビニールテープでとめるのがベターだ→写真白丸内)

 
 (4)分解写真
①60cm2本を連結すれば120cmになるので60cmスリングのみで簡易ハーネスを作ることができる。

②120cmスリングの右と左にレッグループになる輪を作る。この輪に左右の足が入る。

③2本つないだ白いスリング(60cm)を腰に回し、末端を普通に縛る。縛った白スリングの末端二か所と黄色スリングの中央をカラビナで連結する。 結び目の必ずウサギの耳の部分2つをカラビナで連結(1つでは結びが解ける可能性があるばかりではなく、結びが締まって行き墜落時に内臓破裂する危険有)。

④レッグループの黄色スリングと腰に回した白スリングを、ビニールテープや60cmスリング等で連結する(左右2ケ所)。レッグループが尻の所でずり落ちないようにする工夫である。③の2本つないだスリングの連結部は背中の中央にあるので、そこをビニールテープ(写真(1))また60cmスリング(写真(2)と(3))でレッグループを吊る起点とすれば左右の対称性が担保出来る。


60cmスリングが3本しかない場合の方法

①赤いスリングを半回転ねじりレッグループになる輪を作る。この輪に左右の足が入る。

②2本つないだ白いスリングを腰に回し、赤い矢印の部分を普通に縛る。縛った白スリングの末端二か所と赤スリングに黒矢印をつけた部分をカラビナで連結する。

③レッグループの赤スリングと腰に回した白スリングを、ビニールテープや60cmスリング等で連結する(左右2ケ所)。

<参考>180cmスリングで作る簡易ハーネス

ビレーポイント作り用等で180cmスリングを持っている場合に作れます。60cmスリング(極めて多用途)を温存出来ます。アイゼンを履いたまま作れるのは利点です。






ネジリを入れます。墜落時のエネルギーを吸収するためにネジリが必要と考えます。


ネジリは左右に入れます。


お腹の部分をからげて結びます。




結び目のウサギの耳の部分2つをカラビナで連結します。1つでは結びが解ける可能性があるばかりではなく、結びが締まって行き墜落時に内臓破裂する危険もあります。

 
負傷傷者の背負い方 雨具で背負う動画

120cmスリングで背負う

120cmナイロンスリングを負傷者の尻からとって救助者の両肩にかけ背負い紐とする。

背負う人の胸の所の背負い紐になる部分を60cmスリングを使って中央に引き締めてカラビナで固定すると良い。

短距離の移動なら十分に役立つと考えます。

*筆者が実際に出会った数回の救助の場面で使われた背負う方法はすべてこの方法が使われた。素早く出来て、背負う人が両手を使えて、懸垂下降まで出来る方法として相当に優れている。



ストックとザックで背負う
ストック又は60cmくらいの長さの木の枝をザックの背負いひもの下の所に通し入れておく、背負った時にストックと背負う人の背中の間にザックがあるように通し入れておくとストックが背中に直接当たらないので痛くない。ストックに両足をのせてもらい負傷者をザックで背負う(ザックを背負子にする)。

負傷者の背中をスリングで固定したり、雨具で被うように固定すれば、負傷者がのけぞることにも対応出来る。背負う側もかなり楽で、長距離の移動なら、今の所、この方法がベストのようである。


雨具上下で背負う
雨具のズボンの尻の部分を上着の中に入れます(折り紙のヤッコさんの胴体と足を連結するように)。

上着の腰の部分を細引きできっちりしばり上着とズボンを連結します。

上着の右腕とズボンの右足、上着の左腕とズボンの左足を結びます。

120cmスリングと同じ形で背負います。負傷者の尻が雨具でつつまれるなど120cmスリングの方法より優れています。

雨具でなくても長袖シャツと長ズボンがあれば同じことができます。

短距離の移動なら十分に役立つと考えます。


負傷者がハーネスをつけている場合
(1)ハーネスの腰に回るメインベルトの右盲腸の位置と左盲腸(もちろん左に盲腸はない)に2本のスリングをタイオフし(ミュールヒッチorカウヒッチ)て背負いひもとする。下の(2)にあるように、ハーネスの左右のレッグループのビレーループへのベルトの付け根の所に2本のスリングをタイオフしする方法もある(力点が下になるが背負いやすい)。

(2)ザックの中身を出し、背負い紐の上の付け根に、スリング2本をタイオフし、ザック背中上部の釣り手の中を通して交差して正面に出す。そのスリングを負傷者のハーネスのレッグループに掛けて、ザックを背負う(負傷者が背負われる)。


意識のない負傷者を一人で背負う体験をしておきたい。
@平地にビニールシートをひき負傷者役があお向けに横たわる。

@救助者は負傷者の横に同じ向きに横たわる。

@負傷者の救助者から遠い側の足を近い側の足の上に交差させるように乗せる。

@救助者は一本背負いのようにして負傷者の腕を引きながら反転し負傷者を背中に乗せる。四つんばいになり、付近の石や立ち木などにつかまって立ち上がる。

@120cmナイロンスリング(or 長さ3m長幅20mmのテープで作ったスリング)を負傷者の尻からとって救助者の両肩にかけ背負い紐とする。 背負う人の胸の所の背負い紐になる部分を60cmスリングを使って中央に引き締めてカラビナで固定する。 →3つ上項の120cmスリングで背負う図&写真を見て下さい。


 
<負傷者の搬出>
ツエルト担架
①負傷者をツエルトでくるむ。

②引き綱を出したり、ツエルトを閉じたりするのに雪玉を利用しインクノット(クローブヒッチ)で縛ってしまう方法が有効である。

③ツエルトの内側に雪玉を入れ外側から雪玉を芯にテルテル坊主を作る要領でツエルトの布地で包み、テルテル坊主の首の所をスリング等で縛るのである。テルテル坊主の芯としては、雪玉の他に、小石、カラビナなども利用できる。

④関節の部分(足首、膝、大腿のつけね、腰、首)の左右にテルテル坊主を作ってスリングを引き出し、縛り、ツエルトを閉じる。②に書いたように、テルテル坊主は運搬用の支点にもなる。


ザック担架:
①空のザックを3個(A,B,C)用意する。

②背負う側を上にザックAとザックBを同じ方向に並べて置く(本稿では雨蓋が左側にザックの底が右側なるように並べる)。

③Aザックの背負い紐の下(底側)とBザックの背負い紐の上(雨蓋側)をカラビナで連結する。

④もう1つ残ったCのザックを雨蓋が右になるようにしてしてBザックの隣に置く(ABCの順で並ぶ)。

⑤Bザックの背負い紐の下(底側)とCザックの背負い紐の下(底側)をカラビナで連結する。
*ザックの背負い紐は2本あるので③のAB連結と⑤BC連結のためにカラビナが4個必要である。

⑥ABC、3連に並んだザックの上に負傷者が寝る。

⑦6人の救助者を揃え、ABCザックの計6本の背負い紐を持つ位置につく。

⑧だれか1名をリーダと決める。
ザック担架を動かす全ての動作はリーダーの合図で行うこと。

*リーダの合図でザック担架を持ち上げる。リーダーの合図でザックタンカを降ろす(負傷者の足側から降ろす)。

⑨長い距離の移動の場合はABC3連ザックの背負い紐にスリングをタイオフして救助者の肩にかけると良い。

⑩下り坂は負傷者の足側が前になるように進む。上り坂の場合、頭側は足側と比べて重いので、頭側が前(上)の方が搬送しやしすく、また傷病者の不安が少なくなる。



ツエルトタンカ


ザック担架(ザック3ヶをカラビナで連結する


ザックの上に負傷者が横たわり、ザックの背負い紐を6人で持つ

 
ツエルト必携&ツエルトビバーク

1、ツエルト必携
どんな山行にも絶対にツエルトをもっていきましょう。超低山のハイキングでも人口壁にトレーニングに行く時でさえもザックを背負って行くなら、その中に ツエルトが必ず入っているようにしましょう。

2、ツエルトビバークの三種の神器
ツエルト・・・底が割れているタイプのもの。ポールはいらない。パーティに一つといわずいくつかあって良い。 (個人装備と考えて各人がもっていてよい)

マッチ・・・
・ザックの中、ポケットやポシェットの中など複数箇所に複数個持つこと。防水を忘れずに。ライターの場合はズリズリと擦って火をつけるタイプ (圧電式はトラブル多し)

コンロ
・・・・超軽量の登山用コンロ、小型のガスボンベとセットで持つこと。圧電式の着火装置が付属しているコンロが多いが、 着火しないことがあるのでマッチも持つこと。
         


3、ツエルトビバークの用具

三種の神器
・・・ツエルト、マッチ(スペアマッチも)、コンロ(ボンベも)

金属のコップ
・・・火にかけられるもの

非常食
・・・・・・・・チョコ、ガム、チーズ、コンデンスミルクなどコンパクトでカロリーの高いもの。

雨具
・・・・・・・・・・ゴアテックスがコーティングしてあるものが良い。

非常衣類
・・・・・下着がコンパクトで軽いのでおすすめ。(白でない方が良い。新素材でできたももひきと長袖シャツ)

懐中電灯
・・・・・ヘッドランプ&超小型ペンシルライト(防水)の2種類を持っていると良い。

予備電池・・・・・懐中電灯と予備電池と予備電球はセットで持つ。


4、ビバークの方法
・ビバークを決定したら、すみやかに適地をみつけよう。座れればいい。上からの落石が来ないところを選ぶ(もし来そうならばヘルメットをとらない)。風のこない所や水の取れる所はもっと良い。雨が降ってきたら雨水を集める工夫をしよう。ルンゼの中は水と落石の通り道なので避ける。雪山の場合は雪崩の来そうな所を避ける(風下の吹き溜まりは危険!風を避けるとそこに引きずりこまれるので注意)。

・衣類を着込んで、トイレを済ませ、危ない所ならセルフビレーをセットして、2~3人なら横に並んで4~5人なら車座になってザクの上に腰を下ろし、ツエルトをかぶる。底の割れないツエルトはかぶれないので良くない。ベンチレーターが上になるように(ベンチレーターはのぞき穴にもなる)してザックの下にツエルトの底を巻き込んで体重で固定してしまう。風が強い時はツエルトを飛ばされないように注意する(ツエルトの予備があって良い)

・食料の残りを調査し食料を管理する計画を立てる。

・寒くなったら、コンロに火をつける。30分おきに5分燃やすなどの節約をすれば10時間は軽くもつ。燃料の管理は食料の管理とともに重要だ。火をたいている時は寝ないで起きている人の分担を決めておくこと。

・火がたけたらコップでお湯をわかそう。白湯でもいいし、チョコや生姜などを溶かして飲むととてもおいしいし気持ちもおちつく。

・厳冬期の高度の高い場所では、靴のひもをゆるめて足の指の凍傷をふせぐ。

・夜は長いけれど待っていれば必ず朝が来る。

・朝明るくなってからの行動も考えておく。『ルンゼの懸垂になるから落石をよけた場所でピッチを切ろう』、『下からロープを引いて動かなかったらセットをなおしてくれ』、『ホワイトアウトだから一列になって方向を確認しながら進もう』、などなど。でも、考えすぎる時は楽しく前向きなおしゃべりをしよう。


↑ツエルトの張り方を紹介します。
①ツエルトをシラフをシラフ袋にしまうしまい方で袋に押し込んでしまいます。

②ベンチレーターの上の頂点の所(入口と反対側)が一番上に来るようにします。

③その頂点の所にはすぐカラビナがかけられるようにしておきます(多分、初めからカラビナがかかるくらいのテープの輪が縫い付けてあるはずです)。

④ビバークと決めたらまず120cmくらいの高さの所にツエルトを張るための支点Aを作ります。樹木や岩、何もなければ高さはありませんがザックでもよいです。

⑤その支点とツエルトの頂点をカラビナで結んでツエルトを引き出します。
*こうすることで、ツエルトが風に飛ばされることを防ぎます。

*暖をとる必要のあるメンバーがいるなら、この時点でツエルトに入ってもらいます。


⑥支点Aと支点Aから2.5メートル以上離れた支点Bとをメインロープで結びます。

⑦支点Aから2.5メートル離れた所のメインロープ上にフリクションヒッチを巻き付けます。

⑧フリクションヒッチとツエルトの入口側のベンチレーターの頂点をカラビナで連結します。

⑨ツエルトの位置を修正したい場合は支点Aの近くでメインロープ上にフリクションヒッチを巻き付けてツエルトの入口と反対側の頂点のカラビナと連結します。
*支点A側のフリクションヒッチと支点B側のフリクションヒッチを動かしてツエルトの位置を修正します。

⑩ツエルトの四隅等を地面に固定します。

 
つり上げシステム
・ごぼうぬき(1分の1)、カウンターウェイト1分の1、2分の1、カウンターウェイト2分の1、3分の1、カウンターウェイト3分の1、5分の1、7分の1、7分の1ダブルマリーナ、のシステムがある。斜面の状況、救助者の人数、負傷者まで行けるか、支点の状況、カラビナスリングの数、引き上げに要する時間、気温の低下、などの条件を考え工夫して使い分けなければならない。

引き上げに用いられる支点(アンカー)は極めて強力に設置されていなければならない。

・救助者が3名以上いれば、綱引きの綱を引くようにして、負傷者を引き上げてしまうのが良い(ごぼうぬき)。3分の1以上のシステムは摩擦による抵抗が大きいし設置に時間がかかるからである。

 
7分の1ダブルマリナーシステム

@3分の1システムに補助ロープ5mを加えるだけで設置出来る。
@ロープが折り返される箇所が3か所なので摩擦が少ない(7分の1雪山システムは4カ所)。
{参考=ポロネヒッチロック付滑車 →オートブロックこちらを参照)やタイブロック(こちらを参照)で代用出来る。}
@ロック付滑車がない場合、オートブロックによるロックシステムの緩み分の引き上げが必要になるので、広い足場が必要になる(10cm緩みを取るには70cm引かないとならない)。
@まずは7分の1ダブルマリーナを優先する。以下場合に応じて1分の1から7分の1までを使い分ける。

カウンターウェイト1分の1

浮石が多く、負傷者Cに向かって落石が予想される場合は要注意(他に方法がないか考えること)。補助者Aは負傷者Cに向かうロープを引き上げる(緩斜面であり、Cに登る力が残っているのであれば、Aがいない場合でも本システムは機能する)。

@補助者Aによる引き上げが重くて大変な場合は、ACを結ぶロープ上でAの足元あたりにスリングでフリクションヒッチを作りそれを支点に2分の1システムを作って引き上げる。

@支点のカラビナがベアリング付滑車であると、吊り上げスピードは最速となるが、救助者Bと負傷者Cの体重差が大きい時は注意が必要である。

@BがCより下に降りてしまうとコントロール出来なくなるので、上の支点又は負傷者Cからコントロール用の補助ロープを垂らし、Bはその補助ロープを持つことで下る速度をコントロールす下る。

@Bはロープの中間をハーネスに結び体重(カウンターウェイト)を利用して負傷者Cを引き上げる(余りロープが団子になって落下しないよう補助Aに依頼、Aがいなければ別途工夫)。さらに負傷者Cから支点に向かうロープを手で上方向に引きながら、負傷者CにBは体重を利用して負傷者Cを引き上げ、さらに負傷者Cから支点に向かうロープを手で上方向に引きながら、負傷者Cに向かう。

@Bが頭を下にして負傷者方向に向かう方が力に無駄がないが、頭を上にして負傷者Cに向かって良い。

@もう1名の補助者Dがいて、BとDの二人でぶら下がって(カウンターウェイトを2倍にする)と、引き上げ力が増大するように思われるが、ロープを折り返す支点がカラビナであると摩擦力も増大するので、効果はさほど期待できないし二人でぶら下がることでの落石やロープコントロールが難しくなる等のリスクがある。落石の少ない緩斜面には使えるかも知れない。

@Bが負傷者の所に達した場合、補助者Aがいなければそれ以上吊り上げると、吊り上げスピードのコントロールが出来なくなる可能性がある、支点から救助者Bに向かうロープを自己脱出で登り、ある程度登ったら、再度、負傷者Cに向かう。


 
2分の1システム

@救助者が1~2名しかいなくても、負傷者が腕力でロープを引ける場合は、2分の1システムが良い(リードクライミング中に途中で墜落したクライマーがビレーヤーの助けを借りて上の支点までゴボウで登る時と似た原理)。

@オートブロック(フリクションヒッチに同じ)はバッチマンタイプ1が緩みやすくて良い(止まらない場合はタイプ2を使う)。

@オートブロックと支点のカラビナの間隔が短いとオートブロックがカラビナに引き込まれてカラビナの反対に移動しロックをかけることが出来なくなる。それを防ぐため、カラビナとオートブロックの間に60cmスリングを足す方がベター(60cm上がったらオートブロックを負傷者の方向に引き下ろす)。

@1/5や1/7システムの場合は上の60cmスリングを足す方法を採用すること。せっかく引き上げても緩んだオートブロックが締まるまでの距離だけ下がってしまう (1/7だったら10cm下がったら70cm 引いた努力が水の泡)ことを防げる。

カウンターウェイト2分の1

救助者1名のみで、負傷者Dをで吊り上げることが出来る。

@救助者はAの位置にスリングを巻き付け(フリクションヒッチ)、Fから垂直に垂れたA-Fロープに自己脱出をセットする(A-F方向に登る形)。

@救助者AはA-Fロープにぶら下がった状態で負傷者側のC-Fロープを引き上げる{Bの位置あたりを上に(C→F方向に)引く}。

@救助者と負傷者Dが同程度の体重ならば吊り上がる。

@負傷者がE-Cロープを引く{下向き(E→C方向)に引く}ことが出来れば、簡単に吊り上がる。

@Cカラビナの位置に滑車を使えれば簡単に吊り上がる。

@上記のCカラビナの位置の滑車使用の状態で、負傷者がE-Cロープを引こことを加えれば、超簡単に吊り上がる(救助者がC-Fロープを引かなくても吊り上がるだろう)。

@1人1個でよいので滑車を常時携帯していると良いのだが、そうでない場合の方が多いだろう。カラビナとスリングのみしかなくて、しかも、 救助者が1名しかいない場合に、本システム(カウンターウェイト2分の1)が有効と考えられる。

非力な40kgの人2名をカウンターウェイトをにすれば、65kgの人を上げられる(実験済)。



3分の1システム
 *90度回転すればチロリアンブリッジのセットの図となる

上図のようにハーケン1本による支点でシステムを作ってはならない。
ハーケンの場合は効いていても3本を連結して1つの支点にすること。ハーケンやボルトに優先して、腕より太い、枯れていない、樹木を支点にするのが良い(全力で探すこと)。

左図の右端中央のユマールはオートブロックヒッチ(バッチマンタイプ1マッシャー)を使う。
*2分の1の図の右上の位置を参照

左図右端下のブルージックはセットに時間がかかるので、バッチマンが多く使われている。




5分の1システム(下引き)

@救助者がAを下方向に引くと5分の1
*最上部の支点はガルーダヒッチorビエン手orスリングによるオートブロックorオートロック型ビレー器具(ATCガイド等) orロック機能を付加した滑車等を使うことが考えられる。手持ちのロープや道具に合わせて決めることになるので、事前に実験しくりかえし練習しておくこと。

@B1とB2はつながっている。

@B2位置にスリングでオートブロックを施してカラビナをかけ、それにAからのロープをクリップして上に引けば7分の1システムに移行する。


 
7分の1雪山システム
ダブルマリーナに比べて補助ロープが不要、滑車が4カ所もあり摩擦が大きい、抵抗の少ない雪の斜面用、 下向きに引ける(5分の1は上向き)

雪山で支点を作ったり、つりあげシステムをセットする場合は早く確実に(出来るだけオーバー手袋をしたままで)行いたい。そのためにはヌンチャク、オートロック出来るビレー器具(ルベルソキューブなど)、小さな登高器(タイブロックなど)、救助用滑車(プーリーなど)、といった用具をなるべく使うべきである(プーリー1つとタイブロック1つ、軽量のヌンチャク数本は冬季登攀の個人の必携装備にして良いと思われる)。

冬季登攀中に手袋してハーケンの穴にスリングを通す作業は至難だ、でもヌンチャクならそれを簡単に行うことが出来るのだ。

器具名、下から上に向けて
(1)3分の1用タイブロック

(2)ヌンチャク
*タイブロックと対及びプーリーと対

(3)3分の1用プーリー

写真上部の立木付近を拡大して器具名と共に下に掲載
下の写真では器具名を上~下に向けて反対順に記しているので注意のこと


器具名、
右下から左上に向けて

①7分の1用タイブロック
*①の下が上記写真の(3)3分の1用プーリーである

②カラビナ
*タイブロックと対

③7分の1用プーリー
*ない場合はカラビナに変更

④5分の1用プーリー
*ない場合はカラビナに変更

⑤ヌンチャク
*タイブロックと対及びプーリーと対

⑥5分の1用タイブロック
*下に引くとロックする向きにセット

⑦オートロック式プーリー
*ない場合はルベルソーキューブ等に変更

⑧カラビナ
*オートロック式プーリーと対
 

タイブロックとプーリーを組み合わせて作った、オートロックシステム

@左下に伸びるロープの末端に負傷者がつながる。

@7分の1雪山システムの写真ではオートロック式のプーリー1つを使っている(立木にかけた白いスリングのすぐ下)

@オートロックシステムを確実に作ることで、つりあげシステムの安全が保たれる(つりあげシステムの心臓部と言える)。

@プーリーやタイブロックがなければガルーダやビエンテやフリクションヒッチに変更する。

ダブルロープの吊り上げ
@ロープを2本使うダブルロープシステムでクライミング中で、トップが登れた所をセカンドがフォロー出来ない場合
@ダブルロープを使った引き上げシステムを作るのが良い。トップはダブルロープのうち一方のロープ(以下:青ロープ)を支点に固定してまう。そして、もう一方のロープ(以下:赤ロープ)だけを思い切りテンションをかけながら(引き上げながら)ビレーする(3分の1システムを作って引き揚げても良い)。セカンドは、まず、青ロープをハーネスからはずし末端をフリーにする、次に、青ロープを手で引いて登ったり、青ロープにフリクションヒッチを施して自己脱出で登ったりして上昇する。セカンドの上昇力とトップの赤ロープの引き上げ力が加わって2分の1システムに近い効率で昇って来ることが出来る。

 
テンンションのかかったロープを固定して自由に動けるようになる。

図では片手でフリクションヒッチを施すのみであるが、仮固定で両手をフリーにし、 マリーナヒッチでテンションのかかったロープを固定すれば、ビレーヤーが自由に動いた後に(例:負傷者の所まで往復)、再度、ビレーヤーにテンションを戻すことが出来る。



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